昭和のじーちゃんからのLINEを待つ
「お父さん、スマホにしたほうがいいと思うのよ」と、ある日、母が言い出した。
身の回りに楽しむ術を持っているか
私たちきょうだい(3人)と母は、家族LINEで繋がっている。
コロナ禍でなかなか会えない中、家族LINEは互いの近況を手軽に伝え合えて、ライブ感もあって楽しい。父にも入ってほしかったけれど、父は頑なにスマホを拒否。ガラケーを持ち続けた。
「オレは、これがいいんだ」と。
無理強いするのもナンなので、皆、そっとしていた。
昔から、テレビの調子が悪いと、やおらテレビに近寄って「こら、大丈夫か?」とテレビをパンパン叩くような人。子どものころを思い出すと、我が家(実家)では、電化製品のちょっとした修理も配線もすべて母がしていた。母も決して得意だったわけじゃないのだけど。
そうこうしてるうちに鍛えられたのだろう。母は70代後半を迎えた今も、故郷の姉や友人とメールで連絡を取り合い、LINE通話でおしゃべりする。パソコンの設定も、スマホ操作も、とりあえず自力でこなしてる。そういえば年賀状も毎年、パソコンで作ってる。
父はというと…それなりに多趣味でいろいろ楽しみを持っていたから、別にスマホなんかなくてもよかった。コロナ禍までは。
ところが、コロナ禍で趣味の詩吟の集まりがなくなり、年に数回開催されていた同窓会もすべて中止、ゴルフの回数もガクンと減り、ふと気づくと、楽しみはオンラインでの囲碁だけになっていた。
そんな変化は父だけじゃない。日本中、いや、世界中、皆、同じだ。
ただ、そうなったとき、身の回りに楽しむ術を持っているかいないかで、暮らしの質に違いが出る。
スマホにはカメラ機能がある。「これが大きいのよ!」と母は言う。近所を散歩しながら、母は季節の移ろいをカメラに収めるようになった。散歩道で出会った景色を、ときどきLINEで送ってくれる。
母自身、2年前までは「スマホなんて」と言っていた。だけど、ガラケーが壊れたタイミングで思い切ってスマホにしたら、想像以上に世界が広がったらしい。だから、父にことあるごとに薦めていたのだ。「スマホに変えようよ」と。
ところが、男というものは、なぜにこうも頑ななのだろう。妻の薦めに耳を傾けない。父は、母がどんなに薦めても、首を縦に振らなかった。
で、母は娘(私)にヘルプを求めてきたというわけだ。
妻より子どもより、断然、孫か!?
ヘルプも何も、父のためじゃん。もう、手がかかるなあ、相変わらず(-_-;)
というわけで私の出番。
私「スマホに変えて、お父さんも家族LINEに入ろうよ」
父「スマホなんて面倒だ。いらん!」
私「孫の写真や動画、いっぱい送られてくるよ~」
父「え・・・そうなのか・・・」
結局、妻より子どもより、断然、孫!のじーちゃんなのでした。
で、あっさりスマホにすることを承諾。
でも、スマホにすることはOKしても、手続きなどは一切しないから、結局、母が家電量販店のお兄さんと何時間も四苦八苦。さすがに見てられなくて、私も同席。
そんなこんなでなんとか、父の手元にめでたくスマホがやってきた。
すかさず実家を訪ね、LINEアプリを入れて、家族LINEに参加。さらに妹と弟に連絡し、孫の写真や動画を送るよう指令を出す。
「ピコピコ」「ピコピコ」と、しばらく着信音が鳴り続き、昔の懐かしい画像がいろいろ届いた。
「どうすればいいんだ?」と聞こうよ
それから数日、父もさぞ満足していることだろうと高を括っていたら、甘かった…。
電話が鳴るとあわてて切ってしまい、知らない画面が出てきたらどうしていいかわからず不機嫌になり、結局、母に「ガラケーのままがよかった」とブツブツ言ってるという。三歳児か!
昭和のじーちゃんは、わからないことを人に聞くのが苦手らしい。ただ、「どうすればいいんだ?」と聞けばいいだけなのにね。
あれから1カ月、ようやく電話をかけること、受けること、そしてLINEアプリを開いて家族LINEを見ることはできるようになったと母も少し安堵の様子。
私たちきょうだいは、父から家族LINEに初メッセージが入る日を、首を長くして待っている。
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