ご機嫌に生きていくのは難しい?

Bookエッセイ

石井睦美・著『ご機嫌な彼女たち』。湯気が香ってきそうな表紙絵に惹かれて手に取った。

親から離れていく子どもたち

石井睦美さんの作品を読んだのは、実は初めて。名前を知りながら今日まで素通りしてきたことを悔やんだ。

いや、今、この本に出会えてよかった。

登場する4人の女性は、それぞれ年齢も職業も背景も違う。ただ皆、事情は違えど、仕事をしながら、ひとりで子どもを育てている。

思春期にさしかからんとする我が子と、心がすれ違うようになる不安と葛藤。母親の言葉に耳を貸さなくなっていく子どもを前にオロオロする彼女たちの姿は、どこか私自身にも重なった。

アップデートできない母親

子どもの成長はあっという間。幼いころはどこに行くのも一緒で、ただただ可愛かった娘が、友達との世界を持ち始め、親抜きで出かけるようになり、いまや友達との約束が最優先。

「大人の階段の~ぼる~~」なんて口ずさみながら娘の成長を喜んではみるものの、どこかで寂しく思う私がいる。

娘のアップデートに、親の私が追い付けない。必死に追いかけるんだけど、娘はさらに前へ前へと、軽やかに走っていくのだ。

これが、いわゆる「子離れできない」ってやつなのかな……。

いま、追いかけるべきは娘じゃない。私自身の道を追いかけようと改めて思う。

縁と運が織りなす人生を

さて、本書で描かれる4人の女性たち。読者はその誰かに、もしくは4人それぞれのどこかに自分自身を見る。

あえて、男の身勝手さは放り投げられた(深堀りされない)設定。ひたすら女性が生きることにフォーカスしているのが、なんとも潔い。いや、これが真実というべきか。

読み進めながら、縁と運についてずっと考えていた。

すべてが偶然のようで偶然じゃない。繋がるべくして繋がっている。彼女たちの出会いも、子どもとの組み合わせも。出会いも別れも、何もかも。

いつも迷う、いつも悩む

私にもあるなぁ。縁の深い友人たちとの繋がりが。普段はなかなか会えなくても、ふとしたときに顔が浮かぶ。無性に会いたくなる。

遠い昔、意に沿わない異動を会社に命じられ、「それも経験」とか何とか、自分に言い訳してその場に甘んじてる私を本気で怒った友がいた。「そのままでいいの?」「違うでしょ!」と。

「そんなこと私が一番分かってる!」と半ギレして、そのまましばらく疎遠になったっけ。

でも、お互い、心の奥底ではわかってた。大事だからほんとのことを言うのだと。言ってくれているのだと。

友達だろうが、家族だろうが、すべて分かり合えるなんてありえない。共感できないことも、違和感もあって当たり前。そう思うところから始めたいのだけど、なかなかうまくいかない。何歳になっても。

50を過ぎたら迷わない?

とんでもない。いつも迷う。いつも悩む。

それもいい。迷いながら、ときにぶつかりながら、大切な人たちと一緒に、できるだけご機嫌に生きていきたい。

 

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