「山田屋まんじゅう」と密やかな語らい
おやつは娘と私のお楽しみ時間なのだけど、唯一、私ひとりで密かにいただくお菓子がある。
鮮烈な出会い、特別なお菓子
それが、山田屋まんじゅう。
愛媛県西予市宇和町に本店を構える「山田屋まんじゅう」を私が初めて口にしたのは、二十歳を超えていた。
上品な包み紙に素朴な小豆色のマーク。何よりその小ささに、最初は「これだけ?」と思ったものだ。
だけど、ほんの一口、口に入れると、何とも言えない味わいが口の中を幸せいっぱいにしてくれた。こんな小さな1個に、これほどの満足感をもらえるなんて! それまでの和菓子の概念が変わるほどの驚きだった。それほど「山田屋まんじゅう」との出会いは鮮烈だった。
宇和町といえば、父方の田舎のすぐそば。勝手に、いにしえからのご縁まで感じたりして、とにかく出会った瞬間、私の中で「特別なお菓子」になったのだ。
原材料は、小豆と砂糖と小麦粉のみ。1個22g、直径3センチほどの小さなおまんじゅう。シンプルの極致にて、賞味期限も製造日から7日間。
千葉県では販売店も2店舗しかないので、簡単には手に入らない。そもそも、決して「おやつ価格」ではないので、「山田屋まんじゅう」が我が家にあることは、そうそうない。
だけど、これが、ときどき、無性に食べたくなるのだ(^_^;)
数日前、出先で、期間限定販売の「山田屋まんじゅう」に遭遇し、呼ばれているように感じて6個入りを購入した。
さて、どうしようか……。
数年前、家族3人のときに、特別感をたっぷり漂わせながら食後のテーブルに出したことがあるのだが、あまりの小ささに、夫も娘も「?」の顔で、ポイッと口の中に入れておしまいだった。
うーん、この特別な味、どうやら夫にはわかってもらえないらしい。そして、娘には早すぎたらしい。
というわけで、今回は、こっそり私ひとりで、大切ににいただくことにした(^▽^;)
倉橋由美子さんを思う
私は、和菓子と珈琲の組み合わせが大好き。和菓子の控えめな甘さと珈琲のコクは、なぜこれほど合うのだろう……といつも思う。
仕事の合間に、珈琲と一緒にいただく「山田屋まんじゅう」は、当たり前にして極上の味。
そしてもう一つ、「山田屋まんじゅう」といえば――。
私の大好きな作家・倉橋由美子さんも「山田屋まんじゅう」をご贔屓にされていたらしい。このことを知ったときは、嬉し過ぎて膝を打った。倉橋さんは高知のご出身。同じ四国出身に加えて、好きなお菓子も一緒だなんて!
晩年、『星の王子さま』を翻訳されていたときも、『酔郷譚』を執筆されていたときも、もしかしたら傍らには「山田屋まんじゅう」が置かれていたのではないかしら? なんて、勝手に想像したりする。
「山田屋まんじゅう」をいただくときは、倉橋さんを思う。今日は、久しぶりに『酔郷譚』の1節を読みながらいただいた。
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