シュガーロードが育んだ小城羊羹
朝からしっかりした重みある雨が降り続いている。
「コーヒー&和菓子」から始める
ここ数日、青空を見上げる日々が続いていたが、今日は、どうやらまとめて降るらしい。またとない室内日和だ。今日は腰を落ち着けて、先日取材した原稿を仕上げよう。
……と思ったハナから、なんだかやる気が出ない。こういうときは、コーヒーチャージ。
コーヒーには和菓子が合うと、私は昔から思っている。ほっこりした後、「さあ、やるぞ!」と思えるのだ。
和菓子&緑茶だと、ほっこりし過ぎて、誰かとおしゃべりしたくなる。洋菓子&コーヒーだと、ほっこりするけど、その後、遊びに行きたくなる。
何の根拠もないけれど、私が何かを始めるときは、「コーヒー&和菓子」でひとまずほっこりしてから、気合いを入れる。
そんな言い訳みたいな理由をつけて、数日前にパルシステム(生協)で届いて棚にしまっていた小城羊羹(佐賀県小城)を出してきた。
パルシステムでは時々、地方のお菓子が出ることがあって、小城羊羹が出ると私は見逃さない。日本中に羊羹は数あれど、小城羊羹は私の中で1位、2位を争う。ちなみに、小城羊羹と競っているのは、松山の薄墨羊羹だ。
さて、この小城羊羹の特徴は、外側が砂糖で固められていること。これは昔ながらの製法で「切り羊羹」というそうだ。羊羹といえば、今は全体に柔らかいものが主流だが、小城羊羹は昔ながらのこの製法を崩すことなく今に伝えている。
噛むと、まずシャリッと音がする。そのあと、中から柔らかい羊羹がお出ましする。その甘さは絶妙だ。
時間をかけて育まれた味
福岡にいたころ、小城羊羹の里を見てみたくて、小城まで行ったことがある。
JR小城駅から始まる商店街には、何軒もの小城羊羹の店が軒を連ねていた。地方商店街のご多分に漏れず、少し寂しい商店街ではあったけど、なぜか小城羊羹店は20軒以上あって、どこも小さいながらキリッとした佇まいで営業していた。
どの店も製法は同じだが、少しずつ甘さや触感が違うらしい。私は人生初にいただいた「村岡総本舗」の小城羊羹に感動して小城羊羹ファンになったので、脇目も降らず村岡総本舗を探した。ようやく商店街の端っこにその看板を見つけたときは嬉しかった。
福岡時代、おいしい和菓子はどれも佐賀か長崎のものだった。海の幸も山の幸も絶品の福岡で、これぞという和菓子に出会わなかったことが不思議だったけれど、これには理由があることを、小城の村岡総本舗の店先で、若い店主とおしゃべりしながら教えてもらった。
江戸時代、鎖国をしていた日本は、長崎の出島だけが世界との窓口だった。出島に荷揚げされた砂糖は、長崎から佐賀を通って小倉へ続く長崎街道を運ばれたので、この道は「シュガーロード」と呼ばれ、街道沿いに砂糖文化が育まれたそうだ。後に、この近辺には多くの炭鉱ができて、重労働の炭鉱夫の方々にとって砂糖菓子は欠かせないものになったんだって。
だから、長崎と佐賀にはおいしい和菓子が根付いている。時間をかけてゆっくりゆっくり育まれたってことだ。
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