何がきっかけで何が始まるか?!
4年前、生まれて初めて骨折した。外出先で急いで階段を駆け上がっていて踏み外し、妙な態勢で着地した。たいした転び方ではなかったと思う。すぐに立ち上がろうとしたら、左足に感覚がなかった。
愛用靴はニューバランス996
翌朝、ベッドから立ち上がろうとしたら、左足が動かない。転がり落ちるように這い出たら、左足の踝から先が紫色になっていた。これはただごとではないと、整形外科へ向かった。
「見事に折れてるねえ」と医師の一言。その日から3カ月半、生活は一変した。
なにしろ、松葉杖でしか歩けない。真夏のさなか、毎日、汗だくで松葉杖を頼りに歩いた。当時、子どもは小学生になったばかりの1年生。夏休みに家でじっとしているわけにはいかなかった。
3カ月半後、松葉杖なしで歩けるようになったときの喜びは例えようもない。それ以降、ヒールやサンダルをほとんど履かなくなった。4年近く経つ今も、私の愛用靴は、足をしっかり包み込んでくれるスニーカーだ。
お気に入りはニューバランス996。少し幅の狭い私の足型にピッタリで、どこまでも歩ける気がする。これを履いてしまうと、他の靴はもう履けない。スニーカーだけどマット素材のブラックやホワイトもあって、季節ごと、シーンごとに履き替えれば、行けない場所はほとんどない。
骨に負荷をかける運動って何?
話は戻るが、松葉杖を手離す許可が出た日、なんとなく予感があって、骨密度を測ってもらった。
50年近く、転ぼうが、ぶつけようが、骨折したことのなかった私が、ちょっと階段を踏み外しただけで骨を折ったことが、ずっと気がかりだったからだ。結果は、やはり年齢の基準値を少しではあるが下回っていた。
39歳で高齢出産をして以降、子どもと一緒に公園を走り回ってきたから、運動しているつもりでいた。けれど娘が小学生になってからは格段に運動量が減っていた。
骨を鍛えるには、カルシウム摂取。でも、それだけではダメだ。骨に負荷をかける運動が必要だと思った。一念発起してヨガやピラティスを試みたりもしたけれど、どれも長続きしない。
そんなときに頭をよぎったのが、20年以上前にのめりこんだことのあるフラメンコだった。50歳を目前に、まさか私がまたフラメンコ?……と少し躊躇した気もするが、実際は迷っていなかったように思う。
市の広報誌や夏まつりのパンフレットから、自転車で通える公民館にフラメンコサークルを発見。早速見学に行き、即入会した。あれから2年半。今ではフラメンコなしの生活は考えられなくなっている。
何に出会えるかわからない面白さ
不思議なものだと思う。骨折はつらかったけれど、あれがなかったら、フラメンコは「昔、夢中になったことがある習い事」でしかなかっただろう。「運動しなくては」という切実な事態に直面したとき初めて、やりたいことを、もう一度思い出すことができた。
何がきっかけで、何に出会えるかわからない。思ってもいないことから、始まることがある。人生は不思議で面白い。
今日、NHK朝ドラ「おちょやん」が最終回を迎えた。千代の舞台でのセリフ「生きるっちゅうのは、ほんまにしんどうて、おもろいなあ」。この言葉をたくさんの日本人が心に刻んだのではないだろうか。
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