フリーランスを生きる
ノンフィクション本の打ち合わせで、編集者から渡された資料本の中にあったのが…
『マンガ 自営業の老後』
フリーランスの不安とは
そのタイトルにグッときた。
著者は実用書や女性誌で活躍されているイラストレーターの上田惣子さん。20代からイラストレーターとして忙しい日々を送ってきたが、40代後半あたりから徐々に仕事の依頼が減っていったという。
上田さん、53歳(本書執筆時)。同年代の私としては、他人事ではない。このくらいの年齢になると、一緒に仕事してきた編集者の人たちが社内で偉くなって現場を離れ、代替わりが起こる。仕事が減るのも不思議じゃない。
フリーランス=個人事業主。
国民健康保険も国民年金も自分で納め、それでも将来、受け取れるであろう年金は、会社員に比べて圧倒的に少ない。とはいえ、定年がないのがフリーランスの強み。健康に楽しく、細く長く仕事をしていきたいと、私自身も思っている。
そんな私たちにとって、「仕事が減る」のは不安なことなのだ。
年金を受け取れるか否か
『自営業の老後』は、上田さんの「不安」から生み出された。その不安は、フリーランスで働くすべての人の不安と言っても過言ではないだろう。
不安や疑問に1つひとつ向き合い、体当たりしていく姿がリアルにマンガで描かれ、かつ、それらの解決の糸口となる社会のしくみや制度がわかりやすく示されている。
なんと上田さんは、この時点で「年金未納」だった。それをいまさら悔いても取り返しがつかないと諦めていたのだが、専門家に相談すると、何とかなることがわかったのだ。
2016年に「年金機能強化法」という法律ができて、「受給資格を得られる納付期間が25年から10年に短縮された」とのこと。かつ、年金は5年遡って支払い可能。つまり、いま、過去5年分を一括で支払い、さらにこれから5年間、しっかり納付すれば、年金受給資格を得ることができるというわけだ。
もちろん、受給額は納付年数によって変わるので受け取れる年金は少額だ。けれど、たとえ少なくても、生涯年金があるとないとでは「不安」の種類が違ってくるだろう。
「年金未納」を公にするのは勇気がいったと思う。フリーランスはいい時期もあれば悪い時期もある。はじめは納めていても、あるとき途切れてそのままになってしまうケースだってある。上田さんの勇気が、同じ悩みを抱える多くの人を救うと思う。
「日銭を追うより価値を追え」
後半では、上田さんは会計のプロ・林總氏に取材し、自営で仕事をしていく際に必要な会計の知識について切り込んでいく。林氏によると、「簿記3級」を勉強するのがいちばん手っ取り早いそう。本気で取り組めば1カ月で合格できるというのだけど、ほんとかな…。
つまりは資格ウンヌンではなく、フリーランスで仕事していく以上、会計の知識を持つべきということだ。
さらに、どう働くか、について話は進む。
「営業は、自分を売り込んだり仕事をもらいにいくのではなく、専門性を磨き、発注者の目に留まるようにすること。常にステップアップを考えて動くこと」だと林氏。
「日銭を追うより価値を追え」
仕事が減ったとき、そのことを不安がるのではなく、時間をもらったと思えるかどうか。その時間を使って〝価値〟を生み出す動きができるかどうか。どうやら、それこそがフリーランスを生きていくカギになるようだ。
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