冬季オリンピック、ハプニングと不可抗力

日々のこと

青空

北京冬季オリンピックが、日々、熱い。

羽生結弦さんのすごさを思う

開会式より前にフィギュアスケート団体戦が始まったのには、「これ本番なの?」と驚いたけど、宇野昌磨くんのショートプログラムで見事なスタートを切った日本チームは、その後もすばらしいチームワークで、団体初の銅メダルを獲得した。

あれから4日、雪と氷の舞台で、選手たちの躍動が眩しい。

メダルを手にした選手たちのインタビューを聞いていると、どれほどの思いやプレッシャーを抱えながら練習を続けてきたのかがうかがえて、その一言一言が胸に沁みる。

と同時に、この舞台で思わぬハプニングや不可抗力に遭い、言葉にならない思いを抱える選手たちが少なくないことに、胸が痛む。

羽生結弦さんのショートプログラム。

始まってすぐのいかんともしがたいハプニングに、誰より驚き打ちのめされたのはご本人だろう。だけど、彼は最後まで集中を切らさず、美しく素晴らしい演技を貫いた。

個々のジャンプやステップの美しさはもちろんだが、何より彼のスケートは、音楽と一体化する。4回転ジャンプでさえ、音楽の流れに溶け込ませてしまうのだ。音楽の世界をどれほど理解したら、これほどの表現になるのだろう……と感動を通り越えて溜息が出る。

冒頭にあんなハプニングに遭えば、心が折れないまでも挫かれてしまうのが人間だろう。ところが彼は、微塵も自身の世界観を崩すことなく、音楽を感じ、音楽の一部になっていた。羽生結弦という人はこれほどまでにすごいのだと、このとき改めて思った。

滑り終えた後、ハプニングの原因となった氷の箇所を祈るように撫でていたのが印象的だった。インタビュ―の最後に、「嫌われちゃったかな……」と冗談交じりに語ったのも、彼らしい。

他の選手の滑走で氷についていた溝に、踏み切りの瞬間にはまる――あれほどの大きなリンクで、何千万分の1の確率かはわからないけど、あるのだろう、そういうことが。でも、何もそれがオリンピックの舞台で起きなくても……と、思わずにはいられない。

日本中が、いや、世界中がそう思う中で、「仕方ない」と笑った羽生くんの笑顔が素敵だった。

アスリートファーストはどこへ?

そして、スキージャンプ混合団体での高梨沙羅さんの失格騒動。

これはあまりにむごくて、何をどう言ったらいいのかさえわからない。

ただ一つ。高梨さんは何も悪くない。どうか胸を張って日本に帰ってきてほしい。

失格が決まった後、チーム一丸となって、一つずつ、着実に順位を上げて行った姿が素晴らしかった。高梨さんを励ますように、高梨さんの心を少しでも軽くするようにと、皆が心を合わせているようにも見えた。

高梨さんは昔から圧倒的な力を持ちながら、オリンピックの舞台ではその力を十分には発揮し切れないことが多かったように思う。今回こそはと、ご本人も、日本中も思っていた。メダルがどうこうというより、彼女が自分自身の力を思いっきり出し切れるといいな、と思っていた。

なのに、こんなむごい結末があるだろうか。

スーツの規定違反? 彼女は試合用のいつものスーツを着ていたと言う。もし、どうしても計測が必要なら、本番前、せめて、ジャンプを跳ぶ前に計ってOKとなってから跳んだらいいのに。万が一、そこで引っかかったら、着替えてから1本目を跳ぶことだってできるはず。

「アスリートファースト」はどこへ行ってしまったのだろう?

高梨さんは何も悪くない。彼女を攻める人は誰もいないだろう。だけど、今朝更新された高梨さんのSNSの言葉を読むと、高梨さん本人が自身を攻めているようで、せつない。

 

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