生きたいと願いながら命をかけた人たち

百人一首,考えたこと

百人一首を覚えていく中で、ときどき身につまされる歌に出会う。

この命、惜しくはないが、惜しまれる

50番「君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思いけるかな」

作者・藤原義孝 954~974年

あなたのためならこの命など惜しくはないと思っていたけれど、あなたに会えた今、少しでも長く生きていたいと思うようになったのです――

その人のためなら我が命を差し出しても厭わないほど大切な人。そんな人がいるからこそ、少しでもこの命を長らえさせたいと願う。どこか矛盾してるようで、決して矛盾してはいない思い。

1000年以上前、作者の藤原さんは恋しい女性を思ってこの歌を詠んだのだけど、これ、恋愛だけでなく、親子、家族、友人……愛しい人を思うとき、誰もが抱く感情だと思う。

どれほど生きたかっただろう……

昨晩、娘とテレビを観ていたら、2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ(「9.11」)でハイジャックされた4機目の飛行機内で何が起こっていたかを再現するドキュメンタリー番組が始まった。

ハイジャックされた4機目の飛行機・ユナイテッド航空93便はホワイトハウスを目指していたが、自爆テロと認識した乗客数名が協力して、決死の覚悟でハイジャック犯から飛行機の奪還を試みたのだ。

彼らはハイジャック犯に立ち向かうことを決め、立ち上がる直前にそれぞれ家族に電話をかける。そして、機内の状況と自らの覚悟、そして「愛している」と伝えた。

隙をついて客室内のハイジャック犯を取り押さえ、操縦席にたどり着く。操縦桿を握るハイジャック犯と揉み合うが、その瞬間、ハイジャック犯の手によって機体は急降下させられ、93便は野原に激突した。

乗客乗員44名(うちテロリスト4名)死亡。しかし、彼らは命をかけてホワイトハウス撃墜という自爆テロを阻止した。

世界中が彼らを称賛した。

だけど……と思う。

彼らは生きたかった。だから立ち上がった。生きて愛する人たちのもとへ帰るために、決死の覚悟をしたのだと思う。

死を覚悟して闘った。でも、それは生きて帰るため。

それが果たされなかったことが無念で悲しくてならない。

あれから23年、また9月11日がやってくる。

 

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