心地よい眠りにつくために
眠れない経験は誰しもあると思う。私もときどき……いや、けっこうある。
なぜ眠れなくなるの?
だいたいは寝床に入るのが遅くなった日に限って、不思議と頭が冴えて眠れない。眠れないから、ふと気になっていたことを考え始めてしまい、さらに眠れなくなる。
いかん、いかん、何も考えないようにしようと思い直し、「考えないようにしよう」と考えていることに気づいたり。
眠れないという現象は、中医学的に言うと、血流が頭に集まると起こるのだそうだ。じゃあ、血が頭に集まってくるってどんなときなんだろうか?
それは、興奮しているとき。不安が大きいとき。考えごとをしているとき。そして、食べ過ぎたとき。さらには、手足が冷えて冷えのぼせ状態になってるとき、なんだって。
興奮、不安、考えごとが眠気を妨げるのはなんとなくわかる。頭が冴えて眠れなくなるのはそういうときだ。だから、睡眠前はゆったり過ごそう、と言われる。スマホを見ていると目から入ったブルーライトが頭を刺激するから就寝前は見ないほうがいい、などとも言われるわけだ。
だけど「食べ過ぎ」はちょっと意外だった。食べ過ぎてまったりすると眠くなることも多いから、むしろ逆なんじゃないかと思ったのだ。で、その疑問を中医師にぶつけてみた。
中医学的にアプローチすると、「食べ過ぎ」のメカニズムは一つではないらしい。
食べ過ぎると胃が消化しきれず、いわゆる胃もたれの状態になることがある。このときは胃に頑張って消化してもらうために体中の血液が胃に集合し、頭へはそれほど血が回らなくなる。こういうときは眠くなるそうだ。
だけど、同じように食べ過ぎても、胃が元気でバッチリ消化できるケースもある。このときは消化された産物として血が増えて(増えすぎて)体中を巡り、当然、頭にもたくさんの血液がやってくる。こうなると眠れなくなるというのだ。
同じ「食べ過ぎ」でも、人によって、もっと言うと、そのときの胃の調子によって、その後の状態が変わるってことだ。一つだけ確かのは、いずれにせよ食べ過ぎは体によくないってこと。
最後に手足の冷え。冷たくなっているのは、手足に血が巡りづらくなっているということ。手足は氷のように冷たいのに、顔だけ火照って暑いという経験をしたことはないだろうか?更年期に多い症状だが、ようは、手足が冷えると体の末端まで血が届かなくなり、行き場を失った血が水蒸気とともに上へのぼり、頭に血が集まってくるのだという。
食べ過ぎない、冷やさない
なるほど。眠れなくなるメカニズムはわかった。では、気持ちよく眠りにつくにはどうしたらいいのだろうか?
まず、よく言われているように、就寝前に喧嘩したり怒鳴ったりして興奮しないこと。考えごとも夜遅くではなく、朝、スッキリした頭でしよう。
そして、夕食を食べ過ぎない。とくに、夕食後、就寝前に何か食べる癖があるなら、今すぐやめよう。就寝前の飲食は百害あって一利なしってことだ。
そして、手足が冷えやすい人は、眠るとき、ゆったりめの靴下を履くといいそうだ。「布団の中で靴下なんて…」と思わないでほしい。眠るとき足先を温かくしておくと、血が末端まで巡ってくれるので、頭にばかり血が集まることを防いでくれるんだって。レッグウォーマーもおすすめだ。
入浴は日本古来の素敵な習慣。湯船で体全体を温め、その後、お布団にくるまってさらに温められたら、手足も冷えようがない。こうして手足の血流をよくすると、頭に集まりがちな血流が分散されて安眠に繋がる。お風呂ほどダイレクトに安眠に繋がる方法は他にないかもしれない。
だからこそ、湯船につかって手足を温めたら、また冷えるまで活動せずに、なるべく速やかにお布団へ。これが心地よい入眠への近道のようだ。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません