「長調」「短調」って何かを、初めて知る

Bookエッセイ

本

ピアノで新しい曲に進むたび、いつも心に引っかかることがある。

ようやく一念発起!

私はいまだに、曲の「調」ってものを全く理解してない。「この曲はニ長調」と言われても、「?」なのだ。

「ド・レ・ミ・ファ・ソ…」という音階を「ハ・ニ・ホ・ヘ・ト…」と表すことは小学生のころ習ったけど、で、実際にその曲の「調」が何なのか、調性にどんな意味があるのか、なんて考えたこともなかった。

いや、知りたい、考えたい、と思いながらも、いまさらそれを知ってどうする?と思ったりもして、知る機会がないまま、膨大な時間が流れた。

だけどここ数年、ドビュッシーやショパンの曲を弾きながら、ときどき愕然とするのだ。

私が、単に、どの音に♯(シャープ)がつくか、♭(フラット)がつくか、だけでピアノを弾いている……ってことに。

アラベスク(ドビュッシー)と幻想即興曲(ショパン)、どちらも「ド・レ・ファ・ソ」の4音に♯がつく。だけど、この2曲、空気感もイメージも全然違う。

なぜだ?

新しい曲に出会うたび、そんな疑問が積み重なって、とうとう(やっと?!)、やっぱり「調性」ってものをちゃんと知りたいと、心底、思うようになった。

「アラベスク」と「幻想即興曲」は同じ♯音?

そして出会ったのが、吉松隆・著『調性で読み解くクラシック』。

調性って何?というところから始まって、楽器によって得意な調と苦手な調があることや、初めて聞く「自然倍音」とか「平均律」、そして、いちばん知りたかった長調と短調のしくみまで。

♯も♭もない「ハ長調」と「イ短調」を基準に、どのように♯や♭が増えていくか、そのときの音階はどのようなものか。そして、それぞれの調性には、同じ主音を持つ平行調があることも、初めて知った。

ドとファの2音に♯がつく長調は、「レ(ニ)」から始まる音階で「ニ長調」。同じくドとファに♯がつく短調は、3度ずれて「シ(ロ)」から始まる「ロ短調」……マジか('◇’)ゞ

「アラベスク」と「幻想即興曲」が、まさにこの平行調ってことだろう。アラベスクはド・レ・ファ・ソ♯の「ホ長調」。一方、幻想即興曲は同じくド・レ・ファ・ソ♯の「嬰ハ短調」。

♯の位置は同じでも、ホ長調は「ミ」から始まる音階、嬰ハ短調は「ド♯」から始まる音階。まったく違うのだ(-_-;)

そりゃ、曲の空気感が違うのは当然だ。「ド・レ・ファ・ソが♯ね」……なんていう、ただそれだけの理解でこの2曲に向き合っていたかと思うと、恥ずかしい限り( ̄▽ ̄;)

遅すぎることなんて何もない

きっと「調性」ってものは、ピアノを幼少期から続けていると中学生ぐらいで体系的に学ぶのだろう。だけど、私は中学1年生でプツンとやめてしまったので、まったく知らないまま50代になってしまった。

いまさらではあるけれど、何もかもが新しい驚き。「へえ~!」の連続で、これはなかなかの刺激だ。

そんなわけで今、50余年の人生で初めて「調」ってものを意識しながら、ピアノを弾いている。

ショパンのワルツ10番。

この曲、実は途中で何度も転調する。

ロ短調を主軸に、ときに平行調のニ長調に移っては、すぐまたロ短調に戻る。さらにはロ長調へ移り、そこでもロ短調が顔をのぞかせ、最後はニ長調の明るさを取り戻しつつ、やっぱりロ短調でしっとり締める。そんな曲。

「調性」についてちゃんと知りたいと腹を括った、私にとって記念すべき曲になった。

遅いけど、遅すぎることなんて、きっとない。今、知りたくなったのだから、私にとっては「今」でよかったのだろう。ま、ただのイイワケだけど。

とにかく、まずは「ワルツ10番」を、気持ちよく弾けるようになろうっと。

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