「ドン・キホーテ in Cinema」を観た

Bookエッセイ

ひまわり

今年5月(1か月半前)、熊川哲也さん率いる「Kバレエカンパニー」が舞台公演「ドン・キホーテ」を行った。その舞台が映画化されていると知り、早速、というか急遽、娘と観に行った。

憧れの舞台を映画で観る?!

20数年前、熊川哲也さんが英国ロイヤルバレエ団を退団し、日本でKバレエカンパニーを立ち上げたころ、当時の同僚が、熊川哲也というダンサーの凄さを毎日のように語っていたことを思い出す。「人が飛ぶんだよ!跳ぶんじゃないよ、あれは飛んでる!ありえない高さなんだよ!」と熱かった。

当時の私は、舞台を観るならバレエではなくフラメンコ。上へ上へと向かう美しさより、下へ下へと大地を踏み鳴らすサパテアードに魅せられていた。

時が流れ、娘がバレエに夢中になっていることもあって、自然に私もバレエを観ることが増えた。とはいえ、バレエ公演のチケットはあまりに高額で、そうそう連れて行けるものではない。とくにコロナ禍の今、公演じたいが少なく、席数も限られているのでチケットがとれない。

そんなとき、つい先日行われた舞台が映画化されたことを知ったのだ。しかも2週間の限定公開。来週の木曜には終わってしまうというから、観に行くとしたらこの土日しかないと気付いた。

娘に伝えてみると、一瞬で目が輝いた。予定していた買い物も宿題もすべて投げ出し、1時間後には家を出発した。目指すは片道1時間弱、八千代緑が丘駅近くの映画館だ。

コロナ禍の粋な計らい?

舞台公演を映画で観るのは始めてだ。舞台はやっぱり舞台で観ないと醍醐味は味わえないのではないかと正直、不安だったけれど、そんな心配は杞憂だった。始まった途端、娘そっちのけで私自身がスクリーンに惹き込まれ、持ち込んだコーヒーを飲むのも忘れて没頭した。気づいたら2時間5分の上演時間は終わっていた。

主役のキトリ役・飯島望未さん、バジル役・山本雅也さんが圧巻だったのは言うまでもないが、彼らを支えるバレリーナたちの緻密で美しい動きに釘付けになった。ジプシーの群舞場面ではフラメンコに通じる空気感にドキドキしたし、「ドン・キホーテ」を物語としても楽しませてもらった。

なんとも贅沢な2時間。映画だったけれど、舞台の魅力を存分に感じられた。

だからと言って「映画で十分」とは思わない。カット割りもすばらしく、舞台を楽しませてはもらったけれど、やはりところどころ、アップにされたカット割りがもどかしく、「舞台全体を観せて!」と思った場面があった。

映画でも十分に楽しい。また魅力的な舞台の映画化があれば、私たちは観に行くだろう。でもやっぱり、本物の舞台を娘と観たい。海外のバレエ団が以前のように日本で公演できる状況に早く戻ってほしい。

きっと今回の映画化、コロナ禍で舞台を観に行けない全国のバレエファンに向けた粋な計らいだったんじゃないだろうか……。そんなこと思いながら、帰宅の電車に揺られた。

 

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