満席のファミレスで

日々のこと

小花

書店に隣接するカフェが好きな私たち親子。ようは、娘が本屋で思う存分、本を物色(立ち読み&本選び)している間、私はこれまた思う存分、読みかけの文庫本の世界に没頭できる。しかもコーヒー飲みながら。

ちょっと大人なメニューチョイス

今日は、中学の合同説明会に初めて足を運び、あまりの人の多さにクラクラする中、なんとか駅前の丸善にたどりつき、丸善併設のファミレスに並んでようやく席をゲットした。コロナ禍は夢かと思うほどにファミレスは混んでいて、席に案内されたときにはすっかり疲れ切っていた。

私は無難にパスタを注文。娘はメニューとにらめっこし、選んだのは「シェフ自慢のサラダセット」なる子どもが選びそうにない一品。大きなサラダには生ハムや特大ソーセージ、ゆで卵が美しく盛り付けられていて、その絵柄に惹かれた模様。ガーリックトーストとオニオングラタンスープがついていて、普段はパスタやグラタンぐらいしか注文しない娘にしてはチャレンジングな選択だった。コロナ禍で、ずいぶん久しぶりの外食だったからかもしれない。

ようやく運ばれてきたランチをほおばる娘。以前から「三角食べ」を薦めているのだが、どうしても一皿ずつ平らげていく癖が抜けない彼女は、やはり一番魅力的な生ハムやソーセージの載ったサラダから食べ始めた。大きなサラダがひと段落すると、ちょっと飲み物を口にしてから、今度はガーリックトーストをオニオングラタンスープにつけながら「おいしい!おいしい!」と嬉しそうに食べ続けていた。

スープ皿が宙に浮いた!

そのとき、ちょっと信じられないことが起こった。娘が食べている「オニオングラタンスープ」の皿が突然、宙に浮いたのだ。

テーブルに現れたウェイトレスさん。あれ、お水でも注いでくれるのかな?と思った瞬間、「お皿を下げさせていただきます」と言い、……いや、まだ言い終わってもいなかったと思う。とにかく、気づいたときには、今まさに食べている真っ最中の娘のオニオングラタンスープ皿を背後から捉え、持ち上げたのだ。

「え……」と言葉を失う娘。「は?」と絶句する私。

「いま、食べているんですけど!」と私が言うと、「すみません」とその皿を下に置き、今度は奥に置いてあるサラダ皿にわざわざ手を伸ばし、持っていこうとする。

呆気にとられながら「まだ食べている途中ですから、下げないでください」と言うと、ようやく諦めて立ち去ったが、今のはいったい何だったのか……。娘と二人、ポカンとするしかなかった。

改めて店内を見回すと、満席の中を複数のウェイトレスさんたちが忙しく動きまわっている。テーブルの配置的に、通路に背を向けて座っていた娘が、今まさにスープにパンをつけながらフーフー言って食べていることが、もしかしたら彼女からは見えていなかったのかもしれない。先にほとんど食べ終えていたサラダの皿だけが目に入り、もう終わっていると勘違いして手前のスープ皿に手を伸ばしたのだろうか。限りなく良心的に解釈すればそうなるけど……。

「まだ子どもが食べてるじゃないの!」

なんとなく状況は読めたけれど、同時に私は、あるドラマのワンシーンを思い出していた。それは40年ほど前に家族で見たテレビドラマ「北の国から」だ。

火遊びして火事を起こしかけた「純」がどんなに怒られるだろうと覚悟していたにも関わらず、「父さん」は何も言わず、妹の「蛍」と一緒にラーメン屋に連れていった。そこで泣きじゃくる純がなかなかラーメンを食べられないでいると、閉店時間になり、店の人がまだ食べ途中の純のラーメン鉢を無造作に下げようとしたのだ。

「まだ子どもが食べてるじゃないか!」

その瞬間、「父さん」が店の人をすごい剣幕で怒鳴った。私は当時10歳ぐらいだったけれど、その場面がなぜかめちゃくちゃ悲しかったことを覚えている。そしてなぜかこのとき、そのシーンが頭の中に不思議と蘇ったのだ。

もちろん、「北の国から」とは状況も違うし、ウエイトレスさんは忙しさで娘が食べていることに気づかなかっただけだろう。だけど、久々の外食でちょっと大人っぽいメニューをチョイスして、一皿ずつ大事そうに嬉しそうに食べていた娘の表情が、あの一瞬、サッと恐怖に変わったことを私は見逃せなかった。

妄想の中で「子どもがまだ食べてるじゃないの!」と怒鳴ってみた。

うーん、すっきりしない。なんだか釈然としないけど、満席のファミレスはなかなかもって壮絶だってことだ。

 

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